某博物館に昭和初期に作られた彫刻入りの机が保存されています。栃の無垢材でつくられた机は年月を経て重厚な色合いに落ち着いています。この机を忠実に再現できないかとの宿題をいただきました。二つ返事でお受けすることになり、早速実物を調査すると日本的な彫刻が印象深い逸品。ひとめ見て軽井沢彫の家具に違いないと判断し、調べてみると当時の所有者が軽井沢に長期滞在をしていた史実と合致しました。軽井沢彫の家具は明治の後半から現在も作り続けられており、桜の花びらや植物柄の彫刻が施されています。避暑に訪れた海外の外交官、宣教師などの求めにより、日光彫の職人さんたちが軽井沢に移り住み作り始めました。自国に持ち帰るのに便利なようにテーブルの脚などは組立て式になっているのも特徴のひとつ。何度か軽井沢に足を運びましたが、諸条件からすべて東京で手掛けることにしました。木取り、彫刻、塗装仕上げ、そして30年程の年季が感じられるエイジングを施し完成しました。職人さんたちの腕前とセンスによって本物と寸分たがわぬ作品となりました。年に何回かお声がけいただくこのような案件は、最近の私の楽しみのひとつになっています。
昭和初期の軽井沢彫
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